ソーシャルレンディング投資を始める時に、「貸し倒れ状況ってどんなもんなの?」と気になりませんか?誰だって、できれば貸し倒れ率が低い事業者を選びたいものですからね。
ちなみに、ソーシャルレンディング各事業者は“貸し倒れ率”や”貸し倒れ件数”といったデータはあまり公開していません。おそらく目にするのは、”貸し倒れ件数0件!”という数字でしょう。
「本当に貸し倒れした事ないの?それって投資で損をした人がいないって事だよね?」
誰だってこのように思いますよね。そんなウマい話があるわけないだろうと。僕も信じられなかったので、過去の貸し倒れ状況や遅延状況を調べてみました。
この記事では、そんなソーシャルレンディング業界における、貸し倒れや遅延に関するリアルタイムな情報をまとめています。過去および現在の貸し倒れ(デフォルト)や、遅延情報が知りたい人はぜひ参考にしてください。
目次
ソーシャルレンディングにおける貸し倒れ(デフォルト)や遅延とは?
まず、簡単に貸し倒れ(デフォルト)や遅延に関しておさらいしておきます。知っている人は飛ばしちゃってOKです。
遅延とは予定されていた返済が滞ってしまう状況
遅延とは、貸していたお金が予定通り返済されない状況の事を言います。正確には返済遅延ですね。遅延が発生した時点で、基本的には分配金の支払いが止まります。
返済遅延は、融資先の事業が上手くいかなかった場合などに発生し、言ってみれば「せっかくお金出してもらいましたけど、事業失敗しちゃいました…」という状況です。
遅延が発生した後は、投資家のお金を回収するための手続きに入ります。投資した案件に担保や保証があれば、担保不動産の売却などで、投資金額の全額または一部が弁済されます。
全額返済された場合は誰も損をしていませんので、遅延→弁済でとくに問題にはなりません。しかし、一部でも投資家の資産が返ってこない状況になると、貸し倒れ(デフォルト)となり、わりと大問題になります。(次の項目で解説)
貸し倒れ(デフォルト)とは遅延案件が最終的に返済されない状況
返済遅延後に、投資金が回収できなくなる状況を、貸し倒れ(デフォルト)と言います。投資したお金がすべて返済されない事ではなく、1円でも回収できなかった場合も貸し倒れと言われます。
貸し倒れになる原因は、もともと担保や保証のないリスクの高い案件であった事や、担保の価値が予想をはるかに下回ってしまった事が挙げられます。例えば、担保不動産の評価額1億円の予定が、5,000万円でしか売れなかった場合などですね。
余談ですが、実際に貸し倒れが起きても、プラスで終わることもあります。例えば、100万円を利回り5%で運用し、13ヶ月目に貸し倒れになったとしましょう。回収できたお金は97万円でした。
これだけ見るとマイナス3万円になりますが、12ヶ月分の分配金(約4万円)は回収できています。つまり、最終的には回収した97万円と分配金4万円で、1万円のプラスになっています。
これは極端な例なので、0円または10万円しか回収できずに大損になる可能性だってあります。ただ、貸し倒れ(デフォルト)だからと言って、必ずしも100%損をするわけではありません。とくに、担保や保証があれば、回収率も違ってきますからね。
過去にあった個人向けローンファンドの貸し倒れ案件
ソーシャルレンディング業界では、企業向けローンファンドでの貸し倒れ件数は非常に少なく、2019年4月時点でまともに貸し倒れになったのは、SBIソーシャルレンディングのSBISL不動産バイヤーズローンファンドと、ラッキーバンクくらいです。
しかし、過去には個人向けローンファンドで、貸し倒れを発生させていたことがあります。個人向けローンファンドとは、その名の通り、個人向けにお金を貸す商品です。国内ソーシャルレンディング事業者がでてきた2011年頃に、何件か貸し倒れが発生していたようです。
貸し倒れを発生させた企業は、SBIソーシャルレンディング、マネオ(maneo)、AQUSH(アクシュ)など。もしかしたら、他にも小さな事業者では発生していたかもしれません。
この3社は、個人向けローンファンドで、何件か貸し倒れを起こしています。正確な数字は公開されていないので不明ですが、SBIソーシャルレンディングだけは公開していて、全体で約500万円の損失がでています。
SBIソーシャルレンディングで貸し倒れになった個人向けローンファンド商品は、下記の2つ。(現在は販売終了)
- SBISL借換ローンファンド3年
- SBISLフリーローンファンド3年
「SBISL借換ローンファンド」「SBISLフリーローンファンド」販売終了のお知らせ|SBIソーシャルレンディング
SBIソーシャルレンディングとマネオは、このような貸し倒れの事実を踏まえて、個人向けローンファンド商品の販売を終了させました。SBIソーシャルレンディングは2012年7月に、マネオは2011年に終了させています。
その後、完全に企業向けローンファンドだけを取り扱うようになりました。
【事業者リスク】みんなのクレジット事件は特殊な例
2017年に、みんなのクレジットというソーシャルレンディング事業者が、経営破綻しました。通称みんクレ事件と言われており、約30億円の投資金が返還されないという事態に、ソーシャルレンディング始まって以来の貸し倒れ案件になっています。
遅延額は31億円で、最終的には9,660万円を回収しました。回収率はたったの3%程度なので、投資家は97%の損失です。
ただ、このみんクレ事件は、通常の貸し倒れとは少し違います。ソーシャルレンディング事業者が悪さをして、資金繰りができなくなった状態でした。
つまり、完全に悪事をしていた会社なので、通常の手続きを踏んで遅延や貸し倒れしました…というのとは違います。まぁ、結局のところ投資家にお金が返ってこない状況ではありますので、これも立派な貸し倒れと言えますけどね。
事業者が投資家をだますという事は、事業者リスクの1つでもあります。だまされないように事業者選びは慎重にしたいですね。
2019年4月時点のソーシャルレンディング貸し倒れ(デフォルト)状況
2019年4月時点の、ソーシャルレンディング貸し倒れ状況をまとめました。主要なソーシャルレンディング事業者だけの情報なので、小さい事業者ではもしかしたら他にも発生しているかもしれません。
事業者名 | 遅延額 | 回収額 | 回収率 |
みんなのクレジット | 31億円 | 1億円 | 約3% |
SBIソーシャルレンディング | 13億円 | 9億円 | 約70% |
ラッキーバンク | 50億円 | 16億円 | 約30% |
AQUSH(アクシュ)
2009年サービス開始。2014年頃に個人向けローンファンドの複数の案件で、貸し倒れの事実あり。
マネオ(maneo)
2008年サービス開始。2011年頃に個人向けローンファンドで複数の貸し倒れの事実があり、その後に募集を終了。以後、企業向けローンファンドに移行してからは貸し倒れ件数0件。
SBIソーシャルレンディング
2011年サービス開始。2012年頃に個人向けローンファンドで複数の貸し倒れの事実があり、その後に募集を終了。
2018年11月に、企業向けローンファンドのSBISL不動産バイヤーズローンファンドで貸し倒れが確定。
ラッキーバンク
2014年サービス開始。2018年5月頃に遅延が複数の遅延が発生し同年12月に貸し倒れ(デフォルト)になりました。50億円の遅延額のうち、回収できたのは16億円(約30%)です。
2019年4月時点のソーシャルレンディング遅延状況
返済遅延自体は、実はわりと頻繁に発生しています。ただ、事業者によっては、遅延対象のファンド案件に投資しているユーザーにしか通知をしていなく、実際の数や金額は不明です。
しかし、遅延→貸し倒れになると流石にツイッターや関連ニュースでも騒がれますので、今のところは貸し倒れにまでなったケースは少ないです。
マネオ|複数の案件で遅延が発生中
マネオ(maneo)では、複数の案件で返済遅延が発生中です。各遅延案件の情報は、マネオのウェブサイト上で確認できます。2018年11月1日には、100件以上の案件で遅延が発生しました。
マネオ|maneoの虎ローンファンド5.8.9.10号
2018/03/02お知らせ【延滞発生に関するご報告】|マネオ(maneo)
マネオ|カリフォルニア州 米国不動産事業資金ローン(第1次募集~第5次募集)
2018/11/01お知らせ【延滞発生に関するご報告】カリフォルニア州 米国不動産事業資金ローン(第1次募集~第5次募集)
案件数は5件、合計で約1.1億円ほど遅延しています。
マネオ|不動産事業者CU社向け案件
2018/11/01お知らせ【延滞発生に関するご報告】不動産事業者CU社向け案件
案件数は180件以上、合計で約20億円ほどの遅延額になります。
マネオ|事業者EO社向け案件
2018/11/01お知らせ【延滞発生に関するご報告】事業者EO社向け案件
案件数は2件、合計で5,500万円ほどの遅延になります。
マネオ|事業者AU社向け案件
2018/12/03お知らせ【延滞発生に関するご報告】事業者AU社向け案件
2018年12月3日に複数の案件で遅延が発生。主に11月22日に発生したガイアファンディング絡みの案件になります。
マネオ|事業者U社向け案件
2019/1/8お知らせ【延滞発生に関するご報告】事業者U社向け案件
2019年1月8日に複数の案件で遅延が発生。主に事業者U社向け案件になります。不動産担保付きローンファンド628号、630~634号の計6件、約2.3億円の遅延額になります。
マネオ|【事業者C社向け】東京都千代田区エリア 不動産担保付きローンへの投資(第1次~第70次募集)
2019/1/31お知らせ【事業者C社向け】東京都千代田区エリア 不動産担保付きローンへの投資(第1次~第70次募集)
2019年1月31日に、事業者C社向けの案件で遅延が発生。延滞の内容を読む限りはそれほど心配なさそうですが、遅延は遅延ですね。約16億円の遅延額になります。
マネオ|事業者C社向け向け案件(14件)
2019年3月4日に、事業者C社向けの案件で遅延が発生。【事業者C社】東京都千代田区エリア 不動産担保ローンへの投資(第1次~第10次募集)と【事業者C社】東京都中野区、神奈川県藤沢市エリア 不動産担保ローンへの投資(第1次~第4次募集)の2案件になり、ファンドの件数は14件。合計4億円の遅延額になります。
2019/3/4お知らせ|【延滞発生に関するご報告】(CS社)
2019/3/4お知らせ|【延滞発生に関するご報告】(DE社)
マネオ|事業者EG社、CW社向け向け案件(16件)
2019年4月2日に、事業者EG社とCW社向け向け案件で遅延が発生。合計で16案件になり、3.2億円ほどの遅延額になります。
2019/4/2お知らせ|【延滞発生に関するご報告】EG社
2019/4/2お知らせ|【延滞発生に関するご報告】CW社
ラッキーバンク|複数のファンド案件で遅延発生
ラッキーバンクでは、2018年5月に遅延が発生。ほぼすべての運用中ファンド案件で遅延が発生し、みんクレ事件の再来と言われていました。遅延総額は約50億円。
2018年12月にようやく大きな動きがあり、最終的には50億円の遅延額のうち16億円を回収することで決着がつきました。約30%(32.47%)の回収率なので、70%の元本割れになります。
担保額の評価方法に問題があった事、貸付先は親族が経営する企業が多かったこと、貸付の際の審査が甘かったことも問題になりました。
また、事後対応が遅かった事や、最終的な回収率の低さもあって、納得できない人も多かったようです。投資家は約7割近くの元本損失を受ける事になりましたので、大きな貸し倒れ(デフォルト)案件になります。
グリーンインフラレンディング|返済の保留による遅延発生
2018年6月、グリーンインフラレンディングで遅延が発生しました。遅延内容は、“事業とは異なる事業等に一部資金が使用されたこと”による事実確認のために、返済を一時的に保留するようです。
対象のファンド案件は、【第15弾】バイオマス発電ローンファンドと、【第21弾】メガソーラーローンファンドの2件です。ただ、募集は分割されて行われているため、遅延総額としては約133億円近くになります。
参考:ファンドの一部募集停止のお知らせ|グリーンインフラレンディング
最初は疑惑だったのですが、現在では集めた資金が事業とは異なる事業等に使用された事は事実です。
募集内容と異なる資金の使用が一部にあったことについて、どう捉えているのか。
ご心配をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません。
先般公表の事実につきまして、厳粛に受け止めております。同様の事態が二度と発生することのないよう、早期に発生原因を究明するとともに、これを踏まえた体制整備などの再発防止策を速やかに策定し、その内容や進捗状況を適時に公表させて頂く所存です。
2018年7月時点の遅延金額は、7月11日に分配予定だった約7.5億円です。この7.5億円についてはすでに返済できる状態にありますが、返済資金の出どころがはっきりしていない事もあり、事実確認のために返済を保留しているようです。
参考:償還及び分配の実施留保のお知らせ (続報1)|グリーンインフラレンディング
SBIソーシャルレンディング|SBISL不動産バイヤーズローンファンド16~22号(合計7件)
参照:SBISL不動産バイヤーズローンファンド実績|SBIソーシャルレンディング
【SBIソーシャルレンディング】一部の借手からの利息の支払がなされないことに伴う分配不能のお知らせ
2018年7月9日、SBIソーシャルレンディングで返済遅延が発生しました。対象の案件は、SBISL不動産バイヤーズローンファンドの16,17,18,19,20,21,22号、合計7件です。
対象案件の貸付金額は合計で約32億円。毎月回収ができているようで、2018年9月時点の遅延金額は約12.5億円になります。
すでに担保不動産の競売手続に移っているようですが、最終的に貸し倒れ(デフォルト)になるのかはまだわかりません。LTV80%を上限とした案件になりますので、なんとか元本割れだけは避けてほしいところですね。
2018/11/5追記:最終的にはいくつかのファンド案件で貸し倒れ(デフォルト)が確定しました。詳しくはこちらをご覧ください。
ガイアファンディング|すべてのファンド案件で遅延発生
期失ローンについて|ガイアファンディング
【延滞発生に関するご報告】カリフォルニアローンファンド 2018年11月5日運用終了予定案件
延滞発生に関するご報告】 2018年11月19日運用終了予定案件および全ファンドの利息
2018年9月25日に、マネオファミリーの1つであるガイアファンディングで遅延が発生しました。対象のファンドはテキサススターローンファンドの19件です。合計で2.7億円以上もの遅延額になります。
また、2018年11月8日にはカリフォルニアローンファンドで14件の遅延が発生。さらに11月22日には全ファンド案件で遅延発生という大問題になっています。
キャッシュフローファイナンス|複数のファンド案件で遅延発生
遅延発生に関するご報告(TN社)|キャッシュフローファイナンス
遅延発生に関するご報告(KB社)|キャッシュフローファイナンス
延滞発生に関するご報告(U社)|キャッシュフローファイナンス
延滞発生に関するご報告(V社)|キャッシュフローファイナンス
2018年10月4日に、マネオファミリーの1つであるキャッシュフローファイナンスで遅延が発生しました。対象のファンドはECOファンドで27件(2億円)、テクノロジーファンドで7件(0.4億円)の合計34件です。合計2.4億円ほどの遅延額になります。
また、2018年11月5日にはU社向けおよびV社向けの複数の案件で遅延が発生しました。U社向けは43件(約2.8億円)、V社向けは3件(0.5億円)になります。10月と11月を合わせると、合計5.7億円の遅延額になります。
2019年1月9日には、さらに4案件で遅延が発生し、今回の遅延額は約2.6億円になります。詳細は下記のリンクより確認できます。
クラウドリース|複数の案件で遅延が発生
クラウドリースでは、2019年1月10日に複数のファンド案件で遅延が発生しました。遅延しているファンド案件の数は11件です。また、同年の2月6日、3月5日にも複数の案件で遅延が発生しています。
2019/1/10【延滞発生に関するご報告】|クラウドリース
2019/2/6【延滞発生に関するご報告】|クラウドリース
2019/3/5【延滞発生に関するご報告】|クラウドリース
トラストレンディング|3つのローンファンドで遅延が発生
トラストレンディングでは、2019年2月に3津のローンファンドで遅延が発生しました。高速道路工事ファンド、除染事業ファンド、公共事業コンサルティングファンドになり、いずれも分配が止まっています。
遅延の理由としては、上記ファンド事業の実態がなかった事や、その資金がトラストレンディング代表により流用されていたこと。その件に対して損害賠償請求を行った事で支払いが止まっています。
会社の代表が集めた資金を流用していたことも驚きですが、ファンドの事業がなかった事を見抜けなかったトラストレンディングの審査基準にも疑問が残りますね。
遅延や貸し倒れ(デフォルト)を回避するために意識したいこと
ソーシャルレンディングで遅延や貸し倒れを回避するために大切なことは、”分散投資をする”これだけです。また、可能であれば融資先の調査や、投資する業界やテーマの動向に目を光らせたいですね。
「分散せずに1社だけに投資していれば遅延に合わずに済んだのに…」という意見もありますが、それはギャンブルと同じです。その1社で遅延やデフォルトになれば全損ですからね。
投資にはそんなに詳しくない!という僕のような人は、ソーシャルレンディングを運用している方のブログなどで、情報収集をすると捗りますよ。
ちなみの当サイトは初心者向けであることや、僕自身が初心者なので、ソーシャルレンディング業界に対する今後の動向や、各ファンド案件の詳しい情報などはあまり公開していません。
基本的な分散投資や、利回りだけを見ずに担保や保証付きの案件を選ぶ事が、一番大切だと考えています。とくに事業者は1社にこだわらず、複数の口座を開設する事が、あなたの資産を守る事に繋がるでしょう。
ソシャレンの事業者選びに困ったら...
ソーシャルレンディングの事業者選びに困ったら、下記の記事を参考にしてください。初心者の方は、おすすめの事業者ランキングの記事がきっと参考になりますよ。
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